あいちトリエンナーレ2010 『星の回廊』
2010年 8月27日~29日
名城公園 (愛知)
国際芸術祭『あいちトリエンナーレ』のイベント作品として発表された作品 『星の木もれ陽ぷロジェクト星の回廊』は、名古屋城を臨む名城公園南遊園の藤棚を利用して開催された。
高所作業車3台に星の木もれ陽ライトを搭載し、全長100mに及ぶ、過去最大面積で星の木もれ陽を演出する大規模な作品。
来場者は一晩2時間のみの展示にもかかわらず、3晩(展示時間:合計6時間)に1500人もの人が詰めかけ、入場制限が出るほどの盛況ぶり。
作品鑑賞に使用する『星取り網』を受け取るために、受付のテント前には行列ができた。
ほぼ一律の高さに剪定されている藤棚によって作り出された星型の木もれ陽は、星の大きさがほとんど揃っており、小さくきらきらと輝くなんともかわいらしい星が現われた。
鑑賞者は、徐々に輝きを増す星の木もれ陽に誘われて、吸い込まれるように回廊の奥へと足を進める。
一番奥の広場には白い円テーブルのようなものが置かれており、手や道具を使って星型の木もれ陽を作る場所が設けられた。
自らの手の影の中に星型の木もれ陽を作り出すのは、星取り網で星を捕まえるのとは一味違う楽しみがある。
葉に仕掛けがあると思っていた人も、自分の指の隙間から差し込む光が星型になるのを見ると、不思議な光の現象を確かめるように思わず上を見上げてしまうのだ。
ふと気がつけば、隣の人の肩にも星型の木もれ陽が落ちている。
この回廊に降り注ぐ光は、メルヘンの魔法がかかったような特別な光が存在しているような錯覚さえ起こすが、これは普段日常で木の下に見るこもれびと同じ現象と何も変わらない。
私達が何気なく過ごしている日常生活の中には、こうした自然現象が溢れているが、その現象に改めて目を向けることはなかなか無いような気がする。
しかし、こうしてこもれびの形が星型になるだけで、その現象が神秘的に見えてくる。私達が地球という星の一部に取り込まれて、様々な現象の中で生かされている事に気づかされる。
木村が鑑賞者に伝えたいメッセージは、鑑賞者の実体験を通して湧いてきた疑問に意識が向いた時に伝わるのだ。