木村崇人ワークショップ 『木もれ陽シェードランプを作ろう』
2007年 6月11日
早川北小学校 (山梨/早川町)
木村が現在活動の拠点としている、南アルプスの中にある町、山梨県早川町。
この小さな町の中には小学校が2校あるのだが、そのうちの1校である早川北小学校で、木村崇人によるワークショップが行われた。
この小学校の体育館が会場。
当日は、地域の方が、自由に校内を見学し、子供たちの様子を見ることができる学校開放日。ギャラリーが大勢見守る中、ワークショップが始まった。
参加者は小学校生15名、職員、地域の希望者11名。 合計26名。
『木もれ陽シェードランプ』は、普段あまり使用することがない素材である、石膏を使用するため、小学校1年生から6年生までの幅広い年齢層を相手に、無事ワークショップが順調に進むかどうかが最大の問題だった。
まずは、木村崇人という人が、どういう人なのか?
どんな作品を作っていて、どんなことを考えて活動をしているのか?
ワークショップとは、作家活動においてどういった位置を占めたものなのか?
をレクチャーする。
現代美術家という仕事があるという話や、どんな作品を創っている作家なのかという、簡単なスライドを見てもらう。
そして、今回制作する『木もれ陽シェードランプ』が、『木もれ陽プロジェクト』という作品の一環の活動であるという説明が行われた。
レクチャーが終わると、早速制作開始!!!
まずは風船を膨らませて、シェードの型作り。
風船を自分で膨らませない子は、先生に助けてもらいながらの作業。
途中、膨らませている途中の風船が勢い良く飛んで行ってしまうハプニングあり。
レクチャーの間は緊張した面持ちだった子供たちも、作業に入って、かなりリラックスした様子。
風船を台に固定したら、いよいよ石膏を風船にかける作業。
石膏の固さ、風船の角度、石膏をかけるスピード・・・
お手本で木村がやって見せた時は簡単そうに見えたのに、実際にやってみると、思ったよりも難しくて、皆一様に困った様子。
しかし、何度かやるうちに、子供たちは少しずつ石膏の扱いに慣れてきたようだった。
石膏を風船にかける作業が、ケーキ作りに似ていると喜ぶ子。
あまりに、混ぜるのが楽しくて混ぜているうちに、カップの中で硬化し始めてしまう子。
風船から垂れてしまった石膏を、一生懸命すくって風船にかけなおす子。
失敗も成功も、全てが子供たちにとって生きた知識となっているようだった。
今回のワークショップで困ったのは、石膏の硬化するスピードが遅かったこと。
恐らく、レクチャーの際にスライドを見るため引いた暗幕によって日光がさえぎられ、体育館内の気温が上がらなかったことが要因していると考えられる。
硬化スピードが遅いのと、均一にある程度の厚みにかけられなかった為に、石膏にひびが入るハプニングが続出。
あちこちのテーブルで、叫び声があがった。
急遽、木村は一つ一つ、石膏が割れていないか確認しながら、割れてしまったものは、石膏を足して補修。
驚いたことに、低学年の子供たちの石膏は割れることも無くほとんどがきれいに仕上がったのに対して、高学年、講師の方の石膏の多くが、ひびが入ったり割れたりしていた。
これまでに無い、ハプニングが多数出て、木村も少し驚いた様子。
石膏が乾くまでの間は、ライトや台の制作。
電球をセットするソケットと、電気コードの接続をし、できたライトコードをライトの台に固定。
造葉をその台に飾りつけると、ただの針金を曲げただけの台は、雰囲気ががらりと変わる。
ここで、低学年はしばし休憩。
高学年生と、講師、一般の方は、木もれ陽ランプも自分たちで制作。電球が切れたときに、自分たちで替えの電球を作らなくてはいけないので、知っておいて損は無い。
しかし、慣れないカッターを使って、電球の上で星型にアルミホイルを切り抜くのは、かなり難しい作業。
何度もアルミホイルを巻き直しながら、できるまで星型を切り抜く作業を行う。
そうこうしているうちに、全員の石膏は無事硬化。
仕上げの作業に入る。
一番楽しい型抜き。
風船を割るのは、一番緊張する。
すごい音を想像しながら、耳を押さえるようにして風船を割るのだが、石膏で周りを固められた風船は鈍い音を立てて割れる。
子供たちは、この風船の割れる意外な音に、少々拍子抜けした様子だった。
型を抜いた石膏は、まるで大きな卵の殻のよう。
各テーブルにゴロゴロ巨大卵が転がる不思議な風景が広がった。
「あ~~、これ温かい!」
一人の子が、自分の石膏を触ってそう言った。
「石膏が固まる時に熱を発生させるんだよ。」
こんなところでも、石膏の特徴を体験できる。子供たちにとって、石膏は未知な素材だけに、一つ一つの過程が面白いらしい。
石膏がある程度固くなったら、最後の作業に入る。石膏の穴あけ。
石膏の下半分あたりに、20個以上の小さな穴を、釘やドリルで沢山あける。
しっかり持つと、くしゃっと割れてしまいそうで、怖くて力が入れられない。少しずつ力を入れながら、最後の集中力を振り絞って穴あけに集中する。
石膏が厚くて釘では穴が開けられない時は、スタッフや木村にドリルを使って穴を開けてもらう。
高速回転して大きな音が出るドリルを、石膏に押してると、子供たちは心配そうに石膏を握り締める。
ここまでがんばって作ったシェードが、一瞬にして壊れてしまうこともあるため、スタッフもかなり慎重に作業する。
穴があいたら、針金でシェードを台に取り付けて完成!!
ライトがちゃんと点灯するか確認して、星の木もれ陽を観察。白い紙を下にひくと、星の木もれ陽が出現。
「わぁ~~~~~きれい!!!」
自分が作ったライトから星が出てくるなんて!!素敵な光景。
無事ライトは点灯し、26台の木もれ陽シェードランプが完成。
この木もれ陽シェードランプは、学校の文化祭で展示されることになっている。
作業終了後、特別に北小学校で学校給食をいただいた。
驚いたことに、全校生徒と全職員が一緒の部屋で、一緒のものを、一緒に食べる。
少人数の学校だからこそできる、すばらしい給食時間だ。
懐かしい給食をいただきながら、参加した小学生全員が感想を話してくれた。
「風船が割るのが怖かったです。」
「初めてライトを作ったので、難しかったけど、ちゃんとできてよかったです。」
「見てると簡単そうだったのに、自分でやってみると難しかったです。」
かわいい感想が次々と発表された。
最後に木村は
どんなことでも、最初は誰でも上手にできないし、怖かったりするけど、2回、3回とやってみると、少しずつこつがわかってきます。
失敗するかもしれないし、上手くできないかもしれないけど、まずはとにかく、えいっ!とやってみること。そして、色々実験して、観察してみてください。
これから、沢山のことを経験すると思いますが、いろいろな事に怖がらないで挑戦して欲しいです。
頑張ってください!
とメッセージを送った。