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越後妻有アートトリエンナーレ2006 『星の木もれ陽プロジェクト』

星の木もれ陽プロジェクト

2006年 7月23日 ~ 9月10日

なかさと清津スキー場 (十日町市/新潟)

用意されたクレーン車

木もれ陽ライトを吊るために用意されたクレーン車。
高さ50mまでライトを上げて、森の中へアームを伸ばす。専属の操縦者がトランシーバーで木村と交信しながら、ライトの微妙な位置を調整し、星の木もれ陽が一番美しく見えるライトの位置を探す。

木もれ陽プロジェクト始まって以来、最大級の展示が、新潟の十日町市で行われた。

越後妻有アートトリエンナーレ2006で行われたこの展示は、通常の一般展示とは異なり、毎週金曜日、土曜日の7時~9時までのわずか2時間のみの展示。

しかも、晴天時のみの展示とあり、話題が集まった作品である。

回を重ねるたびに口コミで作品の評判が伝わり、鑑賞者の数は増え続け、ついに400人を超える鑑賞者が、わずか2時間の展示に押し寄せた。

展示会場になったのは、なかさと清津スキー場脇に茂る森。

会場視察の時は、とても人が入ることができるような森ではなかったが、地元の方々の協力を得て森を切り開き道を作り、星の木もれ陽を観察することができる広場を作り出した。

この森を照らす星型のこもれびを作り出すために制作されたライトは、9000Wの特別な『木もれ陽ライト』=人工太陽である。

このライトをクレーン車で吊り上げ、この光が届く森の中全体で、星の木もれ陽が見ることができる・・・・はずである。

プレオープン

プレオープン前日。台風が近づいて雨が降る中、ライトの位置や
星の木もれ陽の見え方を確認する作業が行われた。

日本の夏らしく、プレオープンの前日から、台風が迫り大雨が降り続いた。

雨がひどければ前日の実験は中止になるところだったが、かろうじて小雨になった時間を見計らって、クレーンでライトを吊り、光の状態やライトの位置、星の木もれ陽が見えやすい場所などを確認する。

初めての野外で展開した木もれ陽プロジェクトだったので、木村としても予想が付かない不安が付きまとっていたが、実際に星の木もれ陽が確認できて少し手ごたえもあった。

クレーン車の真下から見上げるライト

クレーン車の真下から見上げるライト。
昼間のように明るく森を照らす。蝉などが鳴きはじめてしまうため
生態系を考慮して展示時間を2時間に限定することになった。

展示当日。

2時間前からコへび隊(=越後妻有アートトリエンナーレを支えるボランティア団体)が集まり、木村を中心に受付や森の中の準備が行われる。

受付スタッフ、森の中で誘導するスタッフ、作品の説明をするスタッフ・・・・全員が一通り体験することができるように、30分おきにローテーションを組んで交代するように打ち合わせを行い、全ての作業を説明する。

日没後、徐々に車がスキー場の駐車場へ入ってきた。

場所が町から離れていることや、日時が限定されている作品のため、どの程度の人が集まるのかスタッフは心配していたが、スタートはまずまずの調子。

鑑賞者は、受付のテントでスタッフから星とり網を受け取る。

星とり網とは、虫取り網に白いスクリーンが取り付けられたもので、これを木陰に差し出すと、星の木もれ陽が美しく映し出される仕組みになっている。

天気の良い日が続いて地面が乾いているときは、地面に一面の星の木もれ陽を見ることができるが、天候が悪く地面が黒く湿っていると見にくいので、どんな状況でも星の木もれ陽を見ることができて、より森を楽しめるツールとして星とり網が考えられた。

普段は体験することができない夜の森に、星とり網を手に行灯の光だけを頼りに足を踏み入れる経験は、探検に似たワクワク感がある。

子供も大人も緊張しながらも、暗い森へと足を運び、行灯とスタッフに誘導されて真昼のように明るい開けた広場へと向かう。

暗闇から見える広場は、とても幻想的な光景に見える。

広場へ近づくと、徐々に足元にも星の木もれ陽が見え始めるが、まだ鑑賞者はその形に気づかない。

広場へ付くと、スタッフに説明を聞いて、様々な大きさの星を探しながら森を歩き回る。子供も大人も、星型に気が付くと歓声を上げて驚いた。

ピンホール現象について会場スタッフから聞くと、鑑賞者は木もれ陽ライトの形に気が付き、初めて自分たちが日常で見ているこもれびの形が太陽の形だということに気が付き、改めて自然の力に感動している様子だった。

回を重ねるたびに鑑賞者の数は増し、やがて開場前からスキー場へ向かう一本道に渋滞ができるようになり、星とり網の数が間に合わなくなってしまった。

毎週末にあわせて星とり網の数を徐々に増やしながら対応したが、ついには広場に人が増えすぎてしまい、やむを得ず入場者数を制限する事態に・・・

 

とても幻想的

行灯の光と道案内のスタッフだけを頼りに、真っ暗な森の中へと足を運ぶ。虫の音や葉の揺れる音が聞こえてとても幻想的。

昼間のように明るい広場

突然広がる昼間のように明るい広場。
ここで星の木もれ陽を、星とり網で捕まえたり、道具を使って星の木もれ陽を作り出したりして自然現象の不思議を体験する。

とうとう、2時間のみの展示に400人以上がつめかけ、スタッフの数も倍に増え、会場で回収した星とり網を担いで受付まで走るスタッフが専属で必要になるほどだった。

初めての野外木もれ陽プロジェクトは、期間中、一度も天候に妨げられることも無く、予想を超える反響をよび、大成功のうちに幕を閉じた。

今回は、木もれ陽ライトをクレーンで吊るというスタイルで発表した作品だったが、木村の本当に発表したかった構想は違っていた。

木もれ陽ライトはバルーンライトというヘリウムガスを使用した特殊なライトを使用し、空高く浮かべ、もっと広い範囲で星の木もれ陽を作りたかったのだ。

このバルーンライトを作っているフランスの会社エアースター社に2年にわたりフランス大使館を巻き込んで交渉を続けていたのだが、展示直前になってそれが不可能であるという返答が返ってきた。

あてにしていたバルーンライトが使用できず、急遽制作したのが今回の木もれ陽ライトだったのだ。

現在も、バルーンライト版木もれ陽ライトで壮大な作品を制作する計画は続いている。

木もれ陽ライトの開発、制作には、多くの専門家の力と莫大な予算がが必要であり、木村一人では到底完成させられるレベルではなくなってしまっている。

しかし、多くの協力者を得て、より壮大な夢に向かって研究、実験が続けられている。

いつの日か、バルーンライトで街中のこもれびが星型になることを夢見て・・・

 

 

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