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a-cita cafe special program 『森を食す・森を話す』

森を食す・森を話す

2008年 8月20日

アサヒアートスクエアー(東京)

メニューの試作、試食

早川町のお料理上手な友人に手伝ってもらいながら、森を感じることができるメニューの試作、試食を繰り返し、都会の人が味わうことができない森の食べ物についてミーティングを行った。

個展『森を遊ぶ』の関連ワークショップとして、アサヒアートスクエアーで行われた『森を食す・森を話す』は、木村が暮らす山梨県早川町の人々が昔から食べたものや、森の味を楽しめる創作料理、土や木の匂いを嗅ぐなど、森の魅力を五感を使って存分に味わっていただけたワークショップだった。

木村は展覧会の為に、半年以上自宅の裏山に時間を作っては登り、森と自分の新しい関係を築いていた。

自らの足で森を巡り、森の抱える問題、森の持つ特殊な時間、森から得ている恵み・・・様々な側面を体一杯に感じ、また、森に携わり、森と共に暮らす人々の生の声をリサーチし、展示『森を遊ぶ』で存分に表現したのだが、展示だけでは表現し切れなかった森の魅力=食について切り込む挑戦をしたのである。

木村はもともと大変食べ物に関心が強かったのだが、このワークショップを開催するにあたって、様々な森の恵みの食べ方をリサーチしているうちに、地元の方々に助けられて、普通では手に入らない食材や素材を用意することができた。

話を聞いた地元のお母さん達が、腕自慢の保存食を提供してくださったおかげで、森に暮らす人々の知恵が詰まったおふくろの味まで勢ぞろいしたのである。

 

コップや箸を作るために切り出してきた竹

コップや箸を作るために切り出してきた竹。80歳を過ぎる地元のお父さんに手伝っていただき切り出したのだが、作業をしながら山について様々な話を聞くことができた。

木村は、食べるだけではなく、食べられないものも味わえる試みを準備していた。

日本蜂蜜の巣を口に含んだり、漢方で使われる木肌の皮やニッキの木をかじってみたり・・・

地元の宮大工の方に協力を得て、様々な木々の削り節を用意。木の香りや裏山の土の匂いを嗅いで嗅覚から森を感じる仕組みも用意した。

ワークショップ当日早朝は、山の水を汲みにでかけ、タンク一杯に冷たい岩清水を用意。

これを、竹を切り出して一つ一つ丁寧に仕上げた竹のコップでいただくようにした。

取り皿をどうしようか悩んでいた木村に、地元の方が山から採集した大きな熊笹の葉や蕗の葉を取り皿代わりに使ってみてはどうかと用意してくださった。

こうして、半年かけて森の味覚の仕込みを続けた木村を応援するように、森の魅力を存分に味わってもらいたい!と願う早川町の人々の想いも加わり、すばらしい食材や素材が集まったのである。

 

ワークショップ当日は、関係者の予想を裏切り100人以上の人がつめかけて、急遽机や椅子を追加するという、うれしい悲鳴と共に幕があがった。

ほうの葉を採集

ほうの葉を採集。変色しないように水につけて保存。これにもち米をブレンドした米を包んで塩水でゆでる『ほうの葉飯』は山で仕事をする人のお弁当だったといわれる。

 

森の恵みについて話す

用意した食材の説明をしながら、森の恵みについて話す。参加者は見たこともない食材に驚いたりしながら、興味を持って真剣な眼差しで話を聞いてくれた

おなじみの出前調理人のエプロンをした木村が登場したのだが、その日はエプロンの下の装いが違う。汚れた白いつなぎに熊よけの鈴と鉈を腰に携えている。これは、木村が半年間、山に登るのに着用していた服。

最初に出前調理人の電撃ケーキで、森のイメージのケーキを焼く。
ケーキとは思えない絵具のようなケーキの具材がふっくらと焼きあがり、それをピースに切って、こんもりと盛り付けて森を表現。

少々緊張気味だった鑑賞者も、出前調理人のパフォーマンスとケーキにリラックスした様子で、会話も弾み、森のケーキを次々とほおばってくれた。

出前調理人の衣装をはずした木村は、いつもの青いタオルを頭に巻いて、半年かけて準備した食材を一つ一つ説明。
見たこともない食材に、鑑賞者も興味津々。どのようにして用意されてきたものなのかを伝え、

「森の恵みに感謝して、命をいただく気持ちを持って残さず食べていただけますようお願いします!」

の言葉を合図に、一斉に「いただきます!!」の合唱。

待ちかねた森の恵みを、葉の皿にとってほおばる参加者の顔は、大人も子供も驚きと笑顔にあふれていた。しばらく席についてゆっくりの森の味覚を味わっていただいた後、もう一つのテーブルに参加者を集めた。

このテーブルには、食べられないけど食べてみるもの、匂いを嗅いで見たり触ったりしてみるものなどが用意されている。

木村が森をリサーチしながら森で体験した話や、山師の方や宮大工の方に教えてもらった木の話などを盛り込みながら、森を五感で感じるワークショップが行われた。

森の味覚を葉っぱの皿に取って楽しむ

森の味覚を葉っぱの皿に取って楽しむ参加者。木村が撮影した森の映像を楽しみながら、味わってもらった。

参加者は木村のクイズに答えたりしながら、用意された森の素材を積極的に手に取り匂いを嗅いだり、勇気のある人は口に含んでみたりして、それぞれの感想を話しあった。

最後に、木村がこれまで森を歩いたり、猟師の方に猟へ連れて行ってもらった時の写真などをスライドで見ながら、山の中に移り住んだ自分と森についての関わりや、自分が感じた森について話を広げた。

県外での展覧会が多く、せっかく山の中に住んでいながらも森を満喫できずに2年を過ごしてきた木村にとって、今回の展覧会の為に準備してきた半年という時間は、自分に大きな思考の変化をもたらしたという。

テレビや雑誌などで、森や、広く環境について情報が流されているが、それはあくまで与えられた情報を入手しただけであって、自分が体験して得た情報ではない。

与えられた情報で満足しないで、五感を使って地球に向き合うことで得られる情報を加えることで、今そこにある身の回りの地球が見えてくると木村は話した。

用意された森の恵み

会場の様子

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